かの有名な「美味礼讃」の著者ブリア・サヴァランに言わせると『チーズのないディナーは片目の美女」だそうで、フランス料理なら晩餐会はもちろんのこと親しい友人同志の食事でも必ず登場するのがこの「チーズ」。うやうやしくワゴンに載せられた何種類ものチーズに出て来られると、やっとのことで食事を絶え安堵の胸をなでおろしている日本人には″拷問”にも匹敵するが、サヴァランの子孫のフランス人にとってチーズ抜きは‘正装をして靴を履いていないようなもの"のごとく由々しき大事なことらしい。しかしながら、日本風に‘漬物とごはんが食事の仕上げ…’とパターンは同じと考えるとなんとなく理解出来るというもので、要は慣れの問題というところでしょうか。(ヨーロッパ人にいわせると、日本人は朝っぱらからスープ付きのフルコースを食べる変な人種らしい)。「郷に入れば郷に従え」…世界中どこでも、その土地の風土に合った食物をそこで食べるのが一番美味しいというのは周知の事です。チーズもヨーロッパのカラリとした気候の中で食べてこそおいしいので、安く豊富に手に入るこの機会を逃す手はありません。その上、このカルシウムの娩は我々を粗骨症から防いでくれる力強いナイトなのですから。(グリエールは1090mg/100g、カマンベールは460mg/100g。ちなみに、普通牛乳は100昭/100g、しらす干しは530mg/100gしかし、しらす干しを100g食べるのは至弊の技)
片目の美女のフランス料理をお客様に出さない為、また出されたチーズにニッコリとはほえむ美女になる為の手引きを簡単にまとめてみました。内緒のとっておきの秘訣は‘お腹の空いた時”‘おいしいフランスパン’と一緒に試すことです。(あればサラダやワインも。ただし甘いジュースやコーラは禁物。まだ水のほうがまし)
1)用意するもの
"プラトー・ド・フロマージュ"は食べておいしい以前に、まず目で食べるといわれているので演出に凝る。
- ◆チーズ盆:
- 大理石、木製、カゴなど。出来ればチーズの種類別にチーズ盆を用意する。クロシェ(cloche):つり鐘型のガラスの丸いフタが付いている盆やそれらを載せるワゴンがあればよりオシャレ。
- ◆チーズ切り、ナイフ:
- 小道具として一番大事。少くとも硬質チーズ用とクリーミータイプ用の2本が必要。(カマンベールの小片のついたナイフで硬質を切ると、香りや味、臭いが混ざるため)
- ◆飾りとして:
- 紙製のレースのマット、緑のサラダ菜、ブドウやカシの葉
- ◆添えるもの:
- 果物(梨、リンゴ、イチジク、ブドウ)、ナッツ類(くるみ、アーモンド)、シャキシャキと歯ざわりのよいグリーンサラダ、バター(純粋主義のグルメには軽蔑されるが、グルモン(健喫家とか食物好き)には喜ばれる)
- ◆パン類:
- フランスパン、麦やくるみ入りのパン、ケシ粒をまぶした丸いパン、黒パン、クラッカー
- ◆飲み物:
- 赤ワインが一般的。僧院造りのチーズには、そこのビールも良し、イギリス風にポルト酒をチビチビでも可。
2)チーズをどのように選び、セットするか?
A.
- オーソドックスなやり方はタイプ別(硬質、クリーミー、ヤギ、etc.)に少くとも5種類のバラエティーを揃えるが、10種類以上となると豪華。「美味しい料理の後は良いチーズを必要とする」といわれているので、特別な日のディナーの締めくくりは‘通の中の通A.0.C.ラベルの物を用意する。
- 最近ではチーズのテーマを決めて出すというのが流行。例えばフランスでもサヴォワ地方のチーズのみ(もちろんワインも同地方)、とか各国のウォッシュタイプのみなど。
B.
- チーズもワインと同様、まろやかでソフトな味のものから個佐の強い強烈なものへの順で味わうので、その順序に従い右の方へはソフトなもの、左の方へは個性的なものと並べる。
- 切りやすいようにプラトーの手前に硬質タイプ、一番奥にプルーなどのポロポロともろいもの、中間に白カビタイプやウォッシュタイプ、または山羊のように一人分ずつ包まれているもの。
3)買い方及び保存法
まず頭に入れておくことは、@″チーズは生きている"A貿い買い方は少量買って残さない、の2点。少しずつ買うのはどうも気がひけるという人もいるらしいが、ベルギー人同様、”1cmぐらいのブロック(厚切り)を…’とか‘この位の厚さで”と指で指定して買うほうが良い。(ちなみにスライスはフランス語でトロンシュ(tronche)−trois tronches de Gouda…ゴーダを3枚)。またカマンベール、ブリの類は"いつ食べる″か言い添えると食べ頃を出してくれる。もし近所にチーズ専門店があれば、そこの人と仲良しになることをお勧めする。
さて、買ったらカマンベールや山羊などのソフトタイプは、室温または涼しい地下に置いておき熟成を待つ。当日食べる分をその日に買った場合は、箱や包装紙から出しておく(ガラスのフタ付きのプラトーは室内にチーズの臭いが蔓延しないので便利)。グリエールなどのハードタイプは冷蔵庫の野菜室に入れておき、食べる1時間ぐらい前に包装紙から出しておく。チーズの種類は秋から冬にかけて多くなるのでこの基準だが、署い夏は適当にしないとさすがのハードタイプのグリエールでもグンナリとしておいしくない。
もし残ってしまったら、元の包装紙に戻して冷蔵庫の下段(8〜10℃)に入れておく。硬質、半硬質タイプは1〜2週間、ソフトタイプでも2〜3日はもつが、一度栓を抜いたワインと同様なので、料理などに使い早く食べる。乾操を防ぐため、もし元の包装紙が無い場合は、サランラップ、アルミフオイルで包むかタッバーウェアーに入れておく。
4)A.0.C.(appellation d'origine controle)チーズ
何世紀にもわたり伝統的な作り方を頑固に守っている名品チーズは輝かしいA.0.C.のラベルを誇っている(ワインに例えれば銘柄ワイン)。このA.0.C.ラベルは国家的な規模のチーズ審査委員会ともいうべき"1e Comite National des Appellations d'origine des Fromages"が400以上あるフランスチーズの中から選び抜いた27品について与えているもの。
5)チーズの種類
・カタカナで書いてあるものは代表的なチーズで、日本でもよく知られているもの。
・季節は食べ頃を指す。
@硬質チーズ(pates pressees、Cuites)
牛乳製。冬。スイス、イタリア、フランスの山岳地方で作られ、このまま食べたり料理に使ったりする。
グリエール・スイス(gruyere、スイス)
エメンタル・スイス(emmental、スイス)
コンテ(conte、フランス、A.0.C.)
パルメザン(parmesan、イタリア)
その他:beaufort(A.0.C.)、 Sbrinz
A半硬質チーズ(pates pressees、non Cuites)
牛乳製。夏。フランス、オランダ、イギリスなどで作られているマイルドでフルーティなもの。
カンタル(cantal、フランス最古のチーズ、A.0.C.)
ロブロション(reblochon、フランス、A.0.C.)
トム(tomme de Savoie、フランス)
ゴーダ(gouda、オランダ)
チェダー(cheddar、イギリス)
その他:ossau−iraty(A.0.C.)、Saint-nectaire(A.0.C.)、 Saint−Paulin、gaperon , mimolette
B白カビチーズ(pates molles a croute fleurie)
牛乳製。春と秋。一見白い紙で覆われているように見えるが、これは2〜4週間で表面に出
来るカビ。この白い皮は食べても食べなくてもよい。上から指で押してみて拭かったり、切った断面が真っ白なら未熟で食べ頃では無い。反対に切り口から必要以上にとろけ出していたり、強い臭いがするなら熟成過度。切り口が乳白色で、柔らかだがつやつやと弾力があり(表面張力の原理のように流れ出しそうで流れないものとでもいうか…)、切った時ナイフに少し付く位の熟成度の時が一番クリーミーな味わいの時。
カマンベール(camembert de Normandie、フランス、A.0.C.)
ブリ(Brie de Meaux、フランス、A.0.C.)
caprice des Dieux , chamois d'Orなどもブリの仲間
その他:Neufchatel en Bray(A.0.C.)、Chaource(A.0.C.)、Pave d'affinois、boursault、Pithiviers au foin、Coulommiers、rondeau de champagne、supreme des ducs、Carre du pays Lorrain
Cウオツシュタイプ(pate molles a croute lavee)
牛乳製。春と秋。チーズの外側に菌を植えつけて熟成させるとネバが出てくる。これを水や土地の地酒(キリュールやワインなど)で洗いながら作るもので、独特の強烈な臭いがするが、中味はマイルドでコクがある。一般的に外側はオレンジ系の色をしている。この皮は食べない人が多い。
ボン・レヴェック(pont l'eveque、フランス、A.0.C.)
マンスタ(munSter、フランス、A.0.C.)
リヴァロ(livarot、フランス、A.0.C.)
マロワル(maroilles、フランス、A.0.C.)
その他:Epoisses、petit munster、vacherin(冬)、Chaumes
Dブルーチーズ(pates persillees)
牛、牛と羊、雌羊。春。葉脈状(大理石のような)の筋は青カビの仕業。きりっとした塩味、舌にピリッとくる青カビの刺激、羊のミルクの味がからみあう絶妙な芳香とおいしさは青い傑作とされている。この青カビ(ペニシリアム、ロックフォルテイー)は消化増進として今でも使われ、消化不良の赤ちゃんのミルクに溶かして与えられている。
下記が世界の三大ブルーチーズ。
ロックフォール(雌羊、Roquefort、フランス、A,0.C.)
ゴルゴンゾーラ(Gorgonzola、伊)
スティルトン (Stilton、英)
その他:Bleu d'Auvergne(フランス、A.0.C.)
bleu des Causses(フランス、A.0.C.)
Fourme d'Ambert(フランス、A.0.C.)
bleu de Bresse、Chateau d'Arville(ベルギー唯一のプルーチーズ)
E山羊のチーズ(chevre affines)
春〜夏。ヤギの乳から作るので搾乳時期が限られている。白カビ又は木炭の粉をまぶしたものあり、形も丸、ビラミッド型、筒状と多い。生でも調理してもおいしい。
クロタン・ド・シャヴィニョール(crottln de Chavignol、フランス、A.0.C.)
ピコドン(Picodon、フランス、A.0.C.)
サント・モール(Saint-Maure、フランス)
その他:Selles-sur-Cher(フランス、A.0.C.)、Pelardons、Chabichou、Valencay、Banon(クリの葉で巻いてある)、La Hippe de France(山羊と牛)、Buch、Cloche d'Or、Cabicou
Fフレッシュチーズ(pates fraiches)
非熟成チーズで脂肪分の少ないのが特徴。パンに塗ったりお菓子作りに使ったりする。ハーブやコショー、ニンニク入りと種類も豊富。
プチ・スイス(petit-Suisse)、プルサン(Boursin)、Paturain、Roule、cottage-Cheese、Provencales、Vach qui rit、Maquee du Brabant
Gその他
Manchego(スペイン)、Mozzarella(イタリア)、Samsoe(デンマーク)、Feta(ギリシア)、Bavarien bleu(ドイツ、バイエルン)
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